ジュール・マレイ:コマ撮りされた動くヌードの女性➤デュシャン「階段を降りる裸体」


エティエンヌ=ジュール・マレイ(Étienne-Jules Marey1930-1904)は、フランスの偉大な生理学者である。とくに心臓学の発展などには大いに寄与し、心臓の鼓動(ビート)や呼吸作用や人体の動きに関心を寄せ分析しはじめる。脈を測るためコンパクトな血圧計を開発し普及させたり、昆虫がどのように飛ぶのかを知るために人工昆虫を制作したり、空気の動きの研究もおこなった。そしてついにChronophotographic Gun-空気銃を開発し(1882)、動きの分析を写真にとり分析を深めていく。1873年に『La Machine Animale(アニマル・メカニズム)』を出版、深く関心を寄せていた鳥の飛翔の分析も『Le Vol des Oiseaux (The Flight of Birds)』となって1890年に写真つきで出版される。鳥だけでなく羊やゾウ、魚やミクロの生物や昆虫なども撮影。床に落とした猫の動きの写真は有名である。あのエドワード・マイブリッジの有名な馬の四本の脚の着地の問題を証明するための連続写真は、じつはジュール・マレイが著書の中で「四本の脚は一瞬間、地面を離れる」と書かれたことを証明するためのものだった(カリフォルニアのパロ・アルトでの実験)。エドワード・マイブリッジは、1879年にその証拠の写真を書籍にして刊行した。ムーヴィング・イメージをどうとらえディスプレイさせるかを探求した生理学者ジュール・マレイは、後に1秒間に60コマの速度の映画もつくったことも記憶しておきたい。マルセル・デュシャンの発想は、19世紀後半のジュール・マレイらの探究心と実験から大きなインスピレーションをえていることは(すでにご存知の方も多くいらっしゃるとおもいますが)あらためて確認しておきたい。