2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

モラヴィアの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)-両親、姉、弟ともうまく関係がとれない

イタリア人なら誰でも知っている20世紀イタリアの賢者 モラヴィアはイタリアの作家です。しかもイタリア一の「賢者」とも言われています。イタリアといえば日本では、サッカー、ローマやミラノ、ヴェネチアといった魅力的な街、それに美術や映画、デザイン、…

サン-テグジュペリの「Mind Tree」(3)-「心で見なければ、物事はちゃんと見えてこない。大切なものは目には見えない」

莫大な借金をして手に入れた最新鋭のシムーン機 ▶(2)から続く:サン=テグジュペリはパイロットを降ろされても大空への冒険を続けました。最新鋭のエアロダイナミック・ボディーで空に弾丸のように突入していくシムーン機を、莫大な借金をして手に入れま…

サン-テグジュペリの「Mind Tree」(2)-20歳前後、連鎖する不運

10代後半、哲学や文学に関心が向かっていく ▶(1)からの続き:10代後半になると、バルザック、ボードレール、マラルメ、ドストエフスキーなどの文学にくわえてアントワーヌの関心は哲学に向かっていきました。とくにドイツの哲学者カントやフランスの哲学…

サン-テグジュペリの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)-機械いじりが好きな、のろまな劣等生。

第二次大戦中に出版された『星の王子様』 キラキラとわたしたちの心の星空に瞬いているイメージの中に『星の王子様』のそれがある人はかなり多いのではないでしょうか。第二次大戦中の1944年に地中海上空でサン-テグジュペリの操縦する戦闘機が撃墜されてか…

ジェイムズ・ジョイス「Mind Tree」(3)-『ユリシーズ』出版まで

パリ→スイス→トリエステへ。ベルリッツ語学学校で教える ▶(2)からの続き:『スティーブン・ヒアロウ(Stephen Hero)』は少年期から青年期、そして芸術家として自覚し、パリに旅立つまでを振り返った内容の自叙伝的小説でした。後の『若き日の芸術家の肖像…

ジェイムズ・ジョイスの「Mind Tree」(2)-「エピファニー」を記録しはじめる

語学学校「ベルリッツ」で仕事を得るために向かった町トリエステ 『ダブリン市民』に映し込んだ少年期から成年期 ▶(1)から続く:ジョイスの”樹”は、1902年(20歳)にパリに留学(脱出)するまで、自身にとって醜悪で鬱陶しい”土壌”と”水”と”空気”と”光”の…

ジェイムズ・ジョイスの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)-周囲と協調できない体質

アイルランドの憂鬱な時代に生まれる 長期の翻訳期間を経て日本語訳された20世紀史上最難関の文学であり、20世紀に最も影響力のあった著書でもある『ユリシーズ』、そして『フィネガンズ・ウエイク』を著したジェイムズ・ジョイス。マルセル・プルーストやウ…

フィリップ・K・ディックの「Mind Tree」(3)-長編の罠と、歓喜

長編SF小説を試みる。第一作『偶然世界』 ところがつねにそうなのですが将来の大樹には、必ずといっていいほど困難が降り掛かります。逆に言えば、困難があればこそ大樹に育つのです。ディックの場合は次のようなものでした。多くの短編が有力SF雑誌に掲載さ…

フィリップ・K・ディックの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)-貧困とカウボーイとマンガ

「21世紀の大作家」とも呼ばれるディックの「心の樹」へ 映画『ブレードランナー』の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見る』や映画『トータル・リコール』の原作、そして『高い城の男』『ユービック』『偶然世界』『火星のタイムスリップ』『流れよわが涙、…

フィリップ・K・ディックの「Mind Tres」(2)-小説『オズの魔法使い』の発見とクラシック音楽

カフカ、プルースト、パウンド、そして「ユリシーズ」 ▶(1)から続く:11歳の時、母とディックはバークレーに戻りました。そこでディックは小説『オズの魔法使い』を発見しました。ディックはその中にとてつもない”自由な空想の世界”があることに気づき、…

カレル・チャペックの「Mind Tree」(3)- チェコの大地を覆う大樹へ

ダーシェンカ、または子犬の生活 「民衆新聞」のジャーナリストでありつづける ▶(2)から続く:戯曲『ロボット(R.U.R.)』を出版した翌1921年(31歳)、勤めていた「国民新聞」がナショナリズム的傾向に傾斜し、チャペックは兄ともども「民衆新聞」のプラハ…

カレル・チャペックの「Mind Tree」(2)- 束縛する母との葛藤

家族から孤立した母の異常な愛情 ▶(1)の続き:チャペックにとって、母との関係は決定的なものでした。幼少時から青年期にいたるまで強く内面的な部分に影響し続けます。家事の切り盛りと子供の養育に疲れきった母は、憂鬱症にかかりヒステリーの発作が生…

カレル・チャペックの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)-チェコの職人たちの寒村から

対ナチス、デモクラシーと自由を説いたジャーナリスト カレル・チャペックは20世紀を代表するチェコスロバキア(当時)の作家です。チャペックといえば、年輩者には今日でも使われている「ロボット」という言葉を産み出した戯曲小説『ロボット』や『山椒魚戦…

アンデルセンの「マインド・ツリー(心の樹)」(3)-童話創作は自らの内面を見つめる作業だった

詩を書く-自身の内なる”樹”を見つめ直す ▶(2)のつづき:アンデルセンはイタリアへの旅から戻り『即興詩人』を書きあげます。イタリアを舞台にしながら主人公には自身が人生で味わってきたことのすべてをロマンチックに仮託させています。スペイン階段の物…

アンデルセンの「マインド・ツリー(心の樹)」(2)-自費出版、落ち続ける評判、絶望

オーデンセにあるアンデルセン・ミュージアム 自意識過剰か、純粋か。10代半ばの異常な行動力で、失敗を繰り返す ▶(1)の続き:父を亡くした後、母は再婚し、川沿いの義理の父の家に引っ越します。この引っ越しがアンデルセンに一つの転機をもたらすことに…

ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)」-貧困一家。本を次々に借りる

デンマーク・ロイヤル・バレエ団:マッチ売りの少女: アンデルセンは自作の童話「みにくいアヒルの子」のような人生を送った、と時に言われることがあるようですが、実際にはどんな人だったか、どんな人生を送った人なのかはふつうは知りません。「アンデル…

ミヒャエル・エンデの「Mind Tree」(3)-心の樹を成長させたもの

エンデがヒントにした経済学者ゲゼルのこと-「老化するお金」とは? 旧友からの誘い「絵本をつくってみないか?」から始まった! ▶(2)からの続き:深刻なブレヒト病からものを書くことを断念しようとしていたちょうどその時、ギムナジウム時代の旧友(イ…

ミヒャエル・エンデの「Mind Tree」(2)- 落ちこぼれ、一家離散、挫折

NHK「アインシュタイン・ロマン」に登場していた頃のM.エンデ 大戦中、一家は離散 ▶(1)の続き:エンデ11歳の時、マクシミリアン・ギムナジウム(中高等学校)に入学します。ところが初年級で落第、絶望し11歳の時、自殺を試みようとまでします。この時期…

ミヒャエル・エンデの「マインド・ツリー(心の樹)」(1)-画家の父の影響と方法

幼少期にエンデの作品の背景のすべてがある ファンタジー物語『モモ』や『鏡のなかの鏡』などを生み出したミヒャエル・エンデの「マインド・ツリー」を感じてみれば、きっとミヒャエル・エンデの創作の秘密に出会うでしょう。一つには、ルイス・キャロルもそ…

ドストエフスキーの「Mind Tree」(3)- 神話的古層へ- 

いにしえのサンクト・ペテルブルグの街並 工務局での勤務、翻訳、そして小説の執筆 ▶(2)から続く:フョードルは工兵学校を21歳で卒業後、サンクト・ペテルブルグの工務局に勤務します。まだ叙事詩形式だったゴーゴリの『死せる魂』を最初から最後まで暗唱…

ドストエフスキーの「Mind Tree」(2)- 独特の家族朗読会

ドストエフスキー家の「家族朗読会」がマインドと知識を育てた さらに強くフョードルの”心の樹(マインド・ツリー)”を太く密に育てたのは、ドストエフスキー家独特の「家族朗読会」でした。 夜には家族が客間に集まり父と母が交替で読む(後に兄弟たちも交…

ドストエフスキーの「マインド・ツリー」(1)- 幼さない頃に育まれた「大地感覚」と母が導いた「宗教観」

幼年・少年期の環境がドストエフスキーの感受性を生み出した 『罪と罰』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』『白痴』『地下室の手記』など、ドストエフスキーはどのようにして20世紀文学の数々の名作を生み出しえたのでしょう。ドストエフスキーの”心の樹(マイ…

J.D.サリンジャーの「マインド・ツリー」(3)- 

隠遁生活の真相、東洋思想、瞑想を実践するためだった ▶(続き):サリンジャーは30歳の時のインタビューで存命中の作家を除く気にいっている作家をあげています。カフカ、フローベル、トルストイ、チェーホフ、ドストエフスキー、プルースト、オケイシー、…

J.D.サリンジャーの「Mind Tree」(2)- サリンジャーのノルマンディ上陸作戦

サリンジャーもこのノルマンディ上陸作戦に一員として参加しました 戦争中もタイプライターを持ち歩いたサリンジャー ▶つづいて雑誌『エスクァイアー』や『コリアーズ』にも短編が掲載されます。この頃、軍学校の友人の姉の紹介で劇作家ユージン・オニールの…

J.D.サリンジャーの「マインド・ツリー」(1)

無口で、もの思いに沈み、転校ばかり繰り返していた中産階級のニューヨークっ子 つい最近の2010年1月27日、サリンジャー(Jerome David Salinger)が91歳で老衰で亡くなったことが全世界に向かって報道されました。日本では、2003年に村上春樹訳『キャッチャ…

SFの父・ジュール・ヴェルヌの「Mind Tree」(3)- 地下水脈でつながったニーチェ

フランス・ナントの故郷ジュール・ヴェルヌ・ミュージアムと 動力で動く巨大エレファント 19世紀半ばのパリ-イマジネーションが点火する ヴェルヌは図書館に日参し、気になった航海・地理・科学関係の書籍に読みふけります。後の『月世界旅行』に登場する弾…

SFの父・ジュール・ヴェルヌの「Mind Tree」(2)-空想と、科学的事実と

「僕はもう空想の中でしか旅をしないんだ」、そしてエドガー・アラン・ポーの小説でヒラメク ヴェルヌ11歳の時のことです。ヴェルヌは好きになった従姉カロリーヌのため海の彼方で取った珊瑚の首飾りをプレゼントしたいと思い立ち実行に移します。少年水夫と…

SFの父・ジュール・ヴェルヌのマインド・ツリー(心の樹)(1)-反抗と想像力

ヴェルヌ幼年期の心の土壌 3D技術を駆使した映画『アバター』は、SF映画ならではのイマジネーションで観客をあっと言わしめましが、H.G.ウェルズとともに「サイエンス・フィクション(SF)の父」と呼ばれるジュール・ヴェルヌはいかにしてSF(空想科学小説…